大腰筋刺鍼について

大腰筋刺鍼とは、腰椎から大腿骨までをつなぐ筋肉で、「腸腰筋」と呼ばれる3つの筋肉のうちの一つである大腰筋に刺鍼し、痛みなどの治療を行うものです。

うつ伏せで第4腰椎棘突起間の外方4~5㎝に直刺で、更に外方から斜刺で刺入します。大腰筋の上部は薄くて幅も狭く、下部にいくにつれて、厚くて幅が広いので、L1/2間・L2/3間は下部よりワンサイズ短い鍼を用い、少し腰椎に近づけて直刺します。腰椎を挟んでハの字に鍼が並ぶように刺鍼します。


 
鍼の長さは体格に合わせて3寸(9センチ)前後の物が必要です。
短い鍼では大腰筋に届かなかったり、届いたとしても十分に弛緩させるのは難しいでしょう。

大腰筋は、マッサージや電気治療・湿布薬では刺激が届かず、ストレッチでも体が固い人は伸ばしにくい筋肉です。

そのため疲労の蓄積がされやすく筋肉の緊張が慢性化し、手つかずの頑固なコリになりやすい筋肉です。

頑固な凝りに酷使や不摂生などの条件が重なると、最終的にはぎっくり腰や下肢の神経痛や血行不良の原因となり、下半身の深層筋治療でも重要な部分です。

深部まで直接刺激できる北京堂浅野式の鍼灸治療の効果がとても高い筋肉です。

腸腰筋は、大腰筋、小腰筋、腸骨筋をまとめて腸腰筋と総称しています。小腰筋に関しては、退化してほとんど存在していない方もおられるようです。

下の画像は腸骨筋への刺鍼です。体格により9cm~15cmの鍼を用います。

腸腰筋は、主に3つの働きがあり、

・股関節を屈曲させる働き
・腰椎をS字型に安定させ重力に対して姿勢を保つ抗重力筋としての働き
・骨盤の位置を安定させる働き、など

スポーツの分野だけでなく歩く、走る、足を踏ん張るなど、日常生活で行う動作にも腸腰筋は重要な役割を果たしているのです。

日常生活で行う動作に重要な筋肉ということは、この筋肉が固まってしまうといろいろと支障が出てくるということです。以下は腸腰筋が固くなると起こる症状を挙げてみます。

ぎっくり腰・・・大腰筋の痙攣が原因の事が多いです。

坐骨神経痛・・・股関節や、梨状筋が固くなり起こりますが、大腰筋が固くなっていると、腰から下への血流が悪くなり、坐骨神経痛も起こりやすくなります。

腰痛・・・腰の奥が痛む、起床時や動き始めに腰が伸ばせない腰痛は大腰筋が原因の事が多いです。

大腿部痛・・・大腰筋の中を通る大腿神経が圧迫されると大腿部が痛んだり、大腿四頭筋が固くなり痛みます。

膝関節痛・・・大腿部痛と同じ原因で大腿四頭筋が固くなり膝の痛みが治らないことがあります。

臀部痛、股関節痛、鼠径部痛・・・大腰筋と腸骨筋が股関節の前、鼠径部のすぐ下につくためこの部分が悪いと痛みます。また、臀部が痛くて臀筋群を治療しても治らない場合、骨盤の奥にある腸骨筋が痛みを出している場合があります。この場合も腸骨筋に刺鍼すれば痛みは改善します。

姿勢の悪化・・・腸腰筋が固くなると、初期は反り腰になり、大腿四頭筋も固くなります。仰向けに寝れなくなったり、ぎっくり腰が起こりやすくなります。そのまま加齢が進むと腰椎が逆に前に引っ張られ、円背(ご高齢者で腰の曲がった方のような姿勢)へと進行します。

PMS(月経前症候群)や子宮のトラブル・・・大腰筋が固まり、骨盤内や子宮への血流が悪くなると、生理が重くなり、痛みが強くなります。

足の冷え・こむら返り・・・大腰筋が固くなると腰から下への血流が悪くなり、冷えたり夜間に足がつったりします。同時にむくみも起こりやすくなります。

便秘・・・腰椎から出て腸へいく自律神経の働きが、大腰筋に圧迫され働きが悪くなり、便秘になっている場合があります。

 

以下に当てはまる場合は大腰筋の緊張が考えられます。

・あお向けで寝て膝を伸ばしていると腰痛が起きるが、膝を曲げ丸まっていると軽減する。


・椅子から立ち上がるとき腰が痛くて伸びない(特に長時間座った後)


・立ちっぱなし、歩きっぱなしで腰が痛くなり座ると軽減する。


・体を後ろに反らすとき腰痛が起きる。


・寝返りの時に腰が痛む


・咳、くしゃみをすると腰にひびく。


・ぎっくり腰の経験がある


・腰椎椎間板ヘルニア、脊柱菅狭窄症等、腰椎の器質的疾患がある。


・下肢に症状がある。(痛み、おもだるさ、痺れ、疲労感)


・腰の中央がピンポイントでなく広い範囲で痛む。


・腰の痛む所を押しても少し気持ちいいくらいで、ここというところが押せない。


・上記のような動作や姿勢で腹部が痛む。

 

当てはまる方はぜひ大腰筋刺鍼をお試しください。

カチカチに固まった大腰筋が柔らかい筋肉に代わるまでの治療回数は、個人差がありますが、5回~10回です。