脳血管障害(脳梗塞・脳出血)後遺症の鍼灸治療について

脳血管障害(脳梗塞・脳出血)後遺症の治療について

北京堂浅野式では頭皮鍼へのパルス(鍼に電気を流す)と項鍼(頚部への鍼)体鍼(拘縮した関節の筋肉への鍼)を用います。

頭皮鍼へのパルス(鍼通電療法):大脳皮質の「機能局在理論」に基づき、頭蓋内の出血部や梗塞による脳細胞の虚血状態を改善する目的で行います。


項鍼・・・・脊椎~頚肩部の筋肉を柔らかくし、脳への血液循環を良くする目的で行います。特に神経根付近の脊柱起立筋の深層筋や、斜角筋や胸鎖乳突筋部などの椎骨動脈や内頚動脈の周囲に存在する筋肉を緩ませることが重要です。

体鍼・・・・麻痺による拘縮や痙縮(けいしゅく)で痛む筋肉・動きが悪くなった関節周囲の筋肉にも刺鍼し、可動域の改善を促します。血流改善に加え、求心性の感覚神経も刺激され、神経伝達がスムーズに行われる効果も期待できます。

また、各関節の軟部組織(筋肉や靭帯)の癒着を軽減するために、鍼の後に関節可動域訓練・ストレッチ、手技によるほぐしを行います。

 

頭皮鍼とは

頭皮鍼は、頭皮に刺鍼して治療する方法です。

伝統的な刺鍼療法と、西洋医学の大脳皮質の「機能局在理論」が結合したものです。頭皮のある部分に刺鍼し刺激することで、対応している体の部分の運動や知覚、さまざまな機能の改善・回復を目的とした治療方法です。

頭皮に鍼をすると、その周囲の血流が良くなり、さらに頭蓋骨の中の血流まで良くなることが、研究で明らかになっています。また、科学的に軸索反射や鎮痛鎮静効果、転調効果、血管拡張など色々な反応を引き起こすことで、様々な症状に効果があることが判っています。

脳卒中では、脳の細胞に虚血状態が起きてしまい、脳細胞が機能しなくなったことで様々な後遺症が出ます。この障害された脳細胞やその周囲の血液循環を良くすることで、細胞を回復させて、機能や後遺症を改善させるのです。

ただし、リハビリテーションと同じく、脳細胞が虚血状態で長期間経過してしまうと改善が難しくなります。基本は3ヶ月以内は良く効果が期待でき、そこからは徐々に改善が悪くなります。

もちろん個人の体質や年齢によって回復に差があり、半年、さらに1年経過した状態からも失語症や四肢の痙性麻痺が改善した例があります。完全に細胞が死んでいない仮死状態のような部分があるのではないかと考えられます。

そういった細胞は血流が改善されると復活して、そのまま血流が改善されなければ、回復不能になると考えられます。どちらにせよ早期から治療を開始した方が良いのは間違いありません。リハビリテーションと併用すると、効果もさらに期待できますので、リハビリの初期の段階から治療を行うことをお勧めします。また、回復のみならず、脳卒中の再発予防にも鍼灸治療は高い効果があります。

 

脳梗塞と脳出血について

脳梗塞は「脳卒中」の一つで、脳の血管が詰まることで、その先に血液が流れなくなり、脳の神経細胞が障害される病気です。

原因は大きく①心原性脳塞栓、②アテローム血栓性脳梗塞、③ラクナ梗塞になります。

①心原性脳塞栓症は心房細動などの不整脈により、心臓で出来た血栓が脳に流され、血管に詰まることが原因で起こるタイプです。高齢者に多く、血栓が比較的大きいので、太い血管が詰まり、脳の広い範囲で障害が起こり重症化しやすいです。

②アテローム血栓性脳梗塞は脳の血管壁にコレステロールや血小板などがたまり、詰まってしまい血流が途絶えることで起こります。糖尿病や脂質異常症が原因になりやすく、症状は徐々に悪化するタイプです。

③ラクナ梗塞は脳のごく細い血管が高血圧や高コレステロールの影響で血管壁が厚くなり、詰まってしまい起こるタイプです。比較的若い年齢で起こりやすく、症状も軽く、障害される範囲も小さいです。

また、一過性脳虚血発作は脳の細小動脈が一過性に詰まったり、細くなって血液の流れが減少して起きる梗塞の一種で、たいてい数分から数時間で感覚が戻り症状は消失しますが、脳卒中の前兆としてとても重要な症状です。

 

脳出血も「脳卒中」の一つで、脳の血管が破れることで生命維持中枢を圧迫し、危険な状態を引き起こしたり、体の麻痺などの大きな後遺症を起こします。①くも膜下出血、②脳出血に分かれます。

①くも膜下出血は脳の表面の動脈が破れ、脳を包む「くも膜」と脳の間に出血が広がります。脳の動脈に出来た「脳動脈瘤」というこぶが破裂するのが原因です。鈍器で殴られたような強い頭痛から始まり、急速に症状が起こります。発症より1ヶ月以内に約4割が死亡し、残りの半数の人も命が助かりながらも後遺症を残す重篤な病気です。また、一度破裂した動脈瘤は再出血の危険が高く、その場合7割は死に至り、助かっても重度の後遺症を生じる可能性が高くなります。そのため、くも膜下出血を発症した時には、まずは再出血を防止することが第一になります。

②脳出血は脳の奥にある細い血管が破れて出血する病気です。脳出血は高血圧などで動脈硬化が進むと血管壁が傷つきもろくなり、破れやすくなります。出血を生じた場所にて症状は異なってきますが、気分不良や吐き気を覚え、半身の麻痺や感覚障害、言語の障害などをきたします。重症の場合には、意識状態の悪化を来たし、命が失われることもあります。また、回復後も後遺症に重い症状を残すことが少なくありません。

脳卒中は、上記のような生活習慣により引き起こされやすいと言われています。

また、日本生活習慣病予防協会が提唱している「一無・二少・三多」をご紹介します。

一無・・・禁煙ニコチンが 糖代謝や脂質代謝に異常を起こし、糖尿病や脂質異常症などのリスクを高めます。中枢神経系の興奮と抑制が生じ、心臓・血管系への急性影響をもたらします。一酸化炭素がヘモグロビンと強力に結びついて血液の酸素運搬機能を妨げます。これを補助するために赤血球が増えた状態(多血症)になり、血液をどろどろにして血栓をつくります。タール はさまざまな発がん物質、発がん促進物質、その他の有害物質が含まれています。

二少・・・少食・少酒 昔から「腹八分目で医者いらず」と言うように、暴飲暴食を控えることは、身体の機能を健康な状態に維持していく上で大変重要です。糖尿病、脂質異常症、高血圧の予防・治療の基本は常に食生活にあります。

三多・・・体を多く動かし(多動)、しっかり休養をとる(多休)、多くの人、事、物に接する生活(多接

 

生活習慣病や脳卒中に限ったことではないですが、私見として病気は 食事・運動・睡眠・の乱れと、過度の様々なストレスによって起こされるということ、加えて筋肉の凝りを解消していくと様々な症状が緩和されると考えています。

脳卒中の予防、後遺症、再発予防にしっかり刺す当院の鍼治療を、強くお勧めいたします。