鍼が効かなかった頃の話|浅野先生との出会いが変えた全て

開業して数年間、私はずっと迷っていた

鍼灸師になって数年が経っていました。国家資格を取り、治療院を開業し、毎日患者さんを施術する日々。でも正直に言うと、自分の鍼に自信が持てない時期が続いていました。

腰が痛いと来た患者さんが、3回、5回と通ってくれても、根本的な変化が出ない。「少し楽になった」という言葉はもらえても、何週間かすると元の状態に戻ってくる。そのたびに「自分の技術は本当に人の役に立てているのだろうか」という問いが頭をよぎりました。

当時の私が学んでいた鍼灸は、経絡理論をベースにした伝統的なアプローチが主でした。ツボに鍼を刺し、気の流れを整える——理論としては理解できる。でも目の前の患者さんの「痛みが取れない」という現実に、何度も向き合いました。

「なぜ治らないのか」を本気で考え始めた

転機は、繰り返す症状を持つ患者さんたちとの出会いでした。

何年も腰痛に悩んでいる方。整骨院、接骨院、マッサージ、病院と渡り歩いてきたが変わらない。一時的には楽になるが、また戻る。そういう方が来院されたとき、私は「なぜこの方は治らないのか」を真剣に考えるようになりました。

答えを探す中で気づいたのは、「慢性的な痛みの原因は、体の表面ではなく深い場所にある」という感覚でした。筋肉の奥深く、手では届かない場所。そこに何かがある。でも当時の私には、その「何か」に届くアプローチを持っていなかった。

浅野周先生との出会い

北京堂鍼灸院の浅野周先生と出会ったのは、そんなときでした。

浅野先生は「北京堂浅野式」と呼ばれる独自の深層筋鍼治療を確立された鍼灸師です。長く太い鍼を使い、体の奥深くにある筋肉——深層筋——に直接アプローチする、結果重視の施術スタイル。最初にその施術を見たとき、正直なところ、驚きを通り越して「これが鍼灸なのか」と思いました。

私がそれまで使っていた鍼より、明らかに長い。明らかに太い。そして深く刺す。置鍼(鍼を一定時間体に留置する)を必ず行う。一般的な鍼灸院との違いが一目でわかりました。

浅野先生の著書「鍼灸院開業マニュアル」(三和書籍)には、深層筋へのアプローチの考え方が詳細に記されています。単に深く刺すのではなく、どの筋肉に、どの角度で、どれだけの刺激で——臨床に裏打ちされた具体的な知識が詰まっていました。

衝撃を受けた施術の考え方

浅野先生から学んで最初に驚いたのは、「痛みの根本原因は血流不足とそれによる深層筋の線維化にある」という考え方でした。

筋肉が長期間にわたって虚血(血流不足)と炎症の繰り返しにさらされると、本来は弾力ある筋繊維がコラーゲン組織に置き換わっていく——「線維化」という変性が起きます。この線維化した組織は、揉んでも、ストレッチしても、一般的な鍼でも、なかなか変化しません。

「なぜ何年通っても治らないのか」——その答えがここにありました。表面的なアプローチでは、線維化した深層筋には届かないのです。

もうひとつ、置鍼についての考え方も私を変えました。なぜ鍼を体に留置するのか。それは「軸索反射」の効果を最大化するためです。鍼を一定時間留置することで、刺激を受けた神経が軸索反射を起こし、周囲の血流改善・鎮痛効果が十分に波及する時間を確保できる。置鍼はオプションでも選択肢でもなく、効果を引き出すための必須プロセス——この理解が、私の施術を根本から変えました。

学んだことをすぐに実践した

浅野先生の技術と考え方を学んだ後、私はすぐに自分の施術に取り込み始めました。

最初に変わったのは使う鍼です。より長く、より太い鍼に変えた。深層筋への刺鍼を意識した。置鍼を必ず行うようにした。一般的な鍼灸治療に比較して強い刺激を使い、置鍼を行う——この方針を軸にしました。

変化は思ったより早く現れました。

何年も腰痛に悩んでいた患者さんが、数回の施術で「この感じ、今まで経験したことない」とおっしゃった。坐骨神経痛で足に痺れがあった方が、施術後に「足が軽い」と立ち上がった。五十肩で腕が上がらなかった方が、施術の中で動きが変わっていった。

全員がすぐに完治したわけではありません。でも、変化のスピードと質が明らかに違いました。

「深層筋の問題」を目で確認する力がついた

浅野先生から学んだことは技術だけではありませんでした。

触診の力——どの筋肉が硬化しているか、どこに線維化があるか、どの方向から刺鍼すべきか——を鍛えることで、患者さんの状態を「読む」力が上がっていきました。

例えば慢性腰痛の患者さんを診るとき、私は腰だけを見ません。股関節深部の小殿筋・梨状筋、骨盤周囲の腸腰筋、ハムストリングや外旋筋群——腰椎のアライメント(姿勢タイプ)を見ながら、どこが問題の根本かを探します。腰痛の原因が股関節の深部にある小殿筋の硬化だった、ということも実際に多いのです。そういった「腰以外が腰痛の原因になる」という臨床知見も、浅野先生の系譜から学んだことです。

今も学び続けている

浅野先生との出会いから数年が経ちます。今の私の施術スタイルは、あの頃から見ると別人のようです。

でも、「まだ足りない」という感覚は常にあります。変形性股関節症の患者さんへの四寸鍼でのアプローチ、耳鳴りへの翳風深刺、足根洞・足根管へのアプローチ——浅野先生の著書と臨床を通じて、今もアップデートし続けています。

鍼灸師歴18年、施術回数3万5000回以上。この数字は、「どうすれば目の前の患者さんの痛みが取れるか」を問い続けてきた年数です。

ミッションが変わった

浅野先生と出会う前、私は「いい鍼灸師になりたい」という漠然とした目標を持っていました。

今は違います。

「硬い筋肉の凝りによる症状で困っている人に、深層筋鍼治療を届けたい」——これが私の軸です。そしてその先に「この治療を沖縄全土に、全国に広げたい」という目標があります。

北京堂浅野式の技術は、私一人が持っているだけでは意味が限られる。優秀な施術者を育て、この文化を広げていくこと——浅野先生から受け取ったものを次へつなぐこと——それが今の私の使命だと思っています。

北京堂鍼灸首里いじゅ治療院は、沖縄県那覇市首里にあります。那覇市内・浦添・宜野湾・糸満・豊見城の方にお越しいただいています。

もし今、どこに行っても改善しない痛みを抱えているなら、ぜひ一度ご相談ください。浅野先生から受け取った技術を、あなたの痛みに届けます。