患者さんの「また動ける」が私のやりがいです
北京堂鍼灸首里いじゅ治療院の伊集和重です。鍼灸師になって18年、施術回数は3万5000回を超えました。今日は技術の話ではなく、なぜ自分がこの仕事を続けているのか、少し個人的な話をさせてください。
「痛くて動けなかった人」が動けるようになる瞬間
ぎっくり腰で歩くこともままならなかった方が、施術後に「あ、痛くない」と驚いた顔でしゃがんでみせてくれる瞬間。五十肩で腕が上がらず、服を着るのも一苦労だった方が、数回の施術で頭の上まで腕を伸ばせるようになる瞬間。坐骨神経痛でずっと座っていられなかった方が、久しぶりに家族と長時間の食事を楽しめたと笑顔で報告してくれる瞬間。こうした「また動ける」という言葉と表情に出会えることが、この仕事を続けている一番の理由です。きれいごとに聞こえるかもしれませんが、本当にこれが自分の原動力です。
浅野先生との出会いが、施術思想の転機になった
今の深層筋鍼治療というスタイルに辿り着くまでには、北京堂浅野式の浅野周先生との出会いが大きな転機になりました。それまでも真面目に施術と向き合ってきたつもりでしたが、浅野先生の理論に触れて「痛みの根本原因は血流不足とそれによる深層筋の線維化にある」という考え方を知ったとき、正直、目の前が開けるような感覚がありました。表面をなでるような施術ではなく、線維化した深層の組織そのものに長く太い鍼で直接届かせる。一般的な鍼灸治療に比較して強い刺激を使い、置鍼を行う。この方針に転換してから、それまで変化が乏しかった慢性症状の患者さんの反応が明らかに変わっていったのを覚えています。
「評価される施術」より「価値を届ける施術」でありたい
SNSでの見え方や、周りからどう評価されるかを気にし始めると、施術はどうしても無難な方向に流れてしまいます。でも自分が本当に大切にしたいのは、目の前の患者さんに「価値を届けられたかどうか」です。強い刺激や置鍼は、決して見栄えのためのパフォーマンスではありません。軸索反射という体の仕組みを利用して、本当に血流を変え、線維化した組織に変化を起こすために必要な工程だからこそ行っています。結果に向き合うということは、時に地味で、時に痛みを伴う施術を選ぶということでもあります。それでも「また動ける」を届けたいから、この方針は曲げません。
患者さんと本気で向き合うということ
「自分がされて嫌なことはしない」「誠実であること」「謙虚であること」。当たり前のようで、日々の施術の中で常に自分に問い直している価値観です。痛みを抱えて来院される方は、身体的な辛さだけでなく、不安や焦りも抱えています。だからこそ、症状の説明を曖昧にせず、なぜその筋肉が痛みの原因になっているのか、なぜこの刺激が必要なのかを、できる限り分かりやすく伝えるようにしています。得気(とっき)と呼ばれる、鍼が正しい深さに届いたときの独特の重だるい響きの感覚も、患者さんに事前にきちんと説明することで、不安を減らせると考えています。
健康の架け橋になりたい
自分のミッションは「健康の架け橋になること」です。理想を言えば、どの市町村にも1軒は深層筋鍼治療を受けられる場所がある世界を作りたいと思っています。そのためには自分一人が施術を頑張るだけでなく、この技術と考え方を言語化し、次の世代の施術者に伝えていくことも自分の役目だと感じています。首里から始まったこの治療院が、いつか沖縄の北部や離島、そしていつか全国へと広がっていく。そんな将来像を描きながら、今日も目の前の一人の患者さんと向き合っています。
最後に
技術は磨き続けなければならないし、経営者としての課題も山積みです。それでも、痛みで困っている人を一人でも多く救いたいという気持ちだけは、鍼灸師になったときから変わっていません。北京堂鍼灸首里いじゅ治療院は沖縄県那覇市首里にあり、那覇市内・浦添・宜野湾・糸満・豊見城からも多くの方にご来院いただいています。「また動ける」を一緒に取り戻しましょう。