深層筋鍼治療を全国に広めたい理由

深層筋鍼治療を全国に広めたい理由

沖縄県那覇市首里で「北京堂鍼灸首里いじゅ治療院」を開業して6年。これまでに3万5000回以上、患者さんの身体に鍼を刺してきました。ぎっくり腰で動けなくなった方、坐骨神経痛で夜も眠れなかった方、五十肩で腕が上がらなくなった方。そのたびに、深層筋という「表面からは見えない部分」に向き合ってきました。この記事では少し個人的な話になりますが、なぜ自分がこの「深層筋鍼治療」という技術を沖縄だけでなく全国に広めたいと思うようになったのか、その理由を書いておきたいと思います。

浅野先生との出会いが変えたもの

今の施術スタイルの原点は、北京堂浅野式を確立された浅野周先生との出会いにあります。それまでも一生懸命に施術をしてきたつもりでしたが、浅野先生の理論に触れたとき、痛みの根本原因についての考え方がまるで違いました。

浅野式の核心はこうです。痛みの根本原因は、血流不足とそれによる深層筋の線維化にある。長時間の同一姿勢や過労、冷えなどによって深層筋への血流が慢性的に低下すると、筋繊維がコラーゲン組織に置き換わっていきます。これが線維化です。線維化した組織はさらに血流を悪くし、血流が悪くなればさらに線維化が進む。この悪循環こそが「何年経っても治らない」痛みの正体だという考え方です。

そして、この線維化した組織に長く太い鍼で直接アプローチし、置鍼によって軸索反射を引き出し血流を回復させることが、根本からの改善につながる。この理論を知ったとき、それまで自分がやってきた施術の解像度が一気に上がった感覚がありました。表面を揉んでも届かない場所に、はっきりとした狙いを持ってアプローチできるようになったのです。

「結果」にこだわる理由

鍼灸師として18年以上やってきて、正直に言うと「評価される施術」と「価値を届ける施術」は必ずしも一致しないと感じることがあります。見た目が優しく、痛みが少なく、その場では気持ちよく感じてもらえる施術と、実際に症状の根本を変えていく施術は、時に別物です。

当院では、一般的な鍼灸治療に比較して強い刺激を使い、置鍼を行います。これは決して患者さんを痛がらせたいからではありません。線維化してしまった深層の組織に本当に届かせるためには、それだけの刺激と、軸索反射を引き出すための置鍼の時間が必要だからです。優しいだけの施術で満足していただくことは簡単です。でも、それでは何年も繰り返してきた痛みは変わりません。「本気で結果を出したい」という患者さんの願いに向き合うなら、こちらも本気で技術を届けなければならない。それが自分の中で譲れない一線です。

「どの市町村にも1軒は深層筋鍼治療がある世界」

自分が本気で目指しているのは「健康の架け橋になること」というミッションです。そしてその先にある理想は、どの市町村にも1軒は深層筋鍼治療がある世界を作ることです。

今、那覇市首里の小さな治療院で診られる患者さんの数には限りがあります。1日に施術できる人数、1年に施術できる人数には物理的な天井があります。でも、痛みで困っている人は沖縄だけでなく、日本中にいます。長年の腰痛で仕事を辞めようか悩んでいる人、坐骨神経痛で外出すら億劫になっている人、五十肩で夜も眠れず疲弊している人。そういう人たちのそばに、深層筋鍼治療ができる場所が一軒もない地域が、まだまだたくさんあります。

だからこそ、自分一人が施術を続けるだけでは足りないと考えています。技術を言語化し、優秀な施術者を育て、この技術そのものを再現性のある形にしていく。そうすることで初めて、沖縄の北部・中部・うるま・石垣・宮古、そしてその先の九州・四国・東北・北海道まで、この技術を届けられる可能性が見えてきます。

属人性を資産に変えるということ

「深層筋鍼治療」は、長く太い鍼を使い、線維化した深層筋に直接アプローチするという、決して簡単ではない技術です。だからこそ、これまでは「自分にしかできない」という属人的な部分が大きい施術でもありました。しかし、属人的なままでは広げることはできません。

腰椎のアライメント(丸まり腰か反り腰か)による主動筋の見分け方、腸腰筋や中殿筋、梨状筋への具体的な刺鍼の角度や鍼の長さ、線維化した組織の見極め方。こうした一つひとつの臨床知見を、感覚のままにせず、言語化し、教育できる形にしていく。これは決して簡単な作業ではありませんが、これができて初めて、深層筋鍼治療は「伊集和重にしかできない技術」から「多くの施術者が再現できる技術」へと変わっていきます。

週2〜3日の施術と、残りの時間で広げること

将来的には、自分自身は週2〜3日の施術に絞り、残りの時間を教育・経営・発信・そして全国を回ることに使いたいと考えています。それは決して施術から逃げたいからではありません。自分が施術台の前に立ち続けるだけでは、届けられる人の数に限界があるからです。優秀な施術者を育て、仕組みとして技術を広げていくことこそが、結果的により多くの人を痛みから救うことにつながる。そう信じています。

最後に

「深層筋鍼治療を全国に広める」というと、大きな話に聞こえるかもしれません。でも根っこにあるのは、目の前の患者さん一人ひとりと本気で向き合ってきた、この18年間の積み重ねです。ぎっくり腰で動けなかった人が歩いて帰れるようになる瞬間、坐骨神経痛で眠れなかった人がぐっすり眠れるようになったと話してくれる瞬間。その一つひとつが、この技術を広げる意味を教えてくれています。

「北京堂鍼灸首里いじゅ治療院」は沖縄県那覇市首里にあり、那覇市内・浦添・宜野湾・糸満・豊見城からも多くの方にお越しいただいています。この理念に共感してくださる方、あるいは長年の痛みに向き合いたいと思っている方は、ぜひ一度お越しください。