投球障害は野球だけじゃない|バレー・ハンドボール・水球で肩を痛める人に共通する原因【那覇の鍼灸院】

「病院でもらった湿布を貼り続けているけど、投げるたびに肩の奥がズキッとする」「バレーのスパイクを打った瞬間、肩の中で何かが引っかかる感じがする」。
那覇・首里の北京堂鍼灸首里いじゅ治療院には、こういった「投げる」「打つ」「叩きつける」動作を繰り返すスポーツをしている方が数多く来院されます。

投球障害というと野球のピッチャーを思い浮かべる方が多いと思いますが、実は肩を痛めるメカニズムはバレーボールのスパイク、ハンドボールのシュート、水球のシュート、槍投げ、テニスのサーブ、格闘技の打撃動作まで、驚くほど共通しています。今日はその「共通点」を、深層筋治療の視点から具体的にお話しします。

「投げる・打つ」動作で酷使される筋肉は共通している

肩を大きく振りかぶって腕を加速させ、最後にブレーキをかける。この一連の動作で中心的に働いているのが、肩関節を安定させている回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる4つのインナーマッスル、そして上腕二頭筋長頭です。

  • 棘上筋:腕を横に持ち上げる初動を担う筋肉。投球・スパイクいずれもテイクバックの初期に働く
  • 棘下筋・小円筋:肩甲骨から上腕骨についているインナーマッスルで、腕を振り上げる・外旋させる動きを支えている
  • 肩甲下筋:肩甲骨の裏側(肋骨側)にあり、腕を内側にひねる動き(内旋)を担う。投球のリリースからフォロースルーにかけて強く働く
  • 上腕二頭筋長頭:肩関節の中を通って肘まで伸びる筋肉で、腕を振り下ろす・引き戻す動作でブレーキ役になる

野球のピッチングでは「加速期」と「減速期」という2つの局面がありますが、バレーボールのスパイクもハンドボールのシュートも、実は同じ「加速→減速」の構造を持っています。加速期には棘下筋・小円筋が腕を外旋させながらタメを作り、減速期には肩甲下筋と上腕二頭筋長頭が急ブレーキをかける。この「アクセルとブレーキを同時に踏むような負荷」が、毎日何百回も繰り返されることで、これらの筋肉の深層部にじわじわとダメージが蓄積していきます。

競技ごとの負担のかかり方の違い

同じ「投球障害」でも、競技によって最も負担が集中する筋肉は微妙に異なります。

  • 野球(ピッチャー・外野手の遠投):肩関節にかかる回旋スピードが非常に速く、減速期の棘下筋・小円筋への牽引ストレスが大きい
  • バレーボール(スパイク・サーブ):ジャンプの着地衝撃と腕の振り下ろしが同時に起こるため、肩甲下筋と体幹の連動が崩れやすい
  • ハンドボール・水球(シュート動作):相手や水の抵抗の中で腕を振るため、通常より大きな力を発揮しようとして棘上筋・棘下筋への負担が慢性化しやすい
  • 槍投げ・テニスのサーブ:上腕二頭筋長頭にかかる牽引ストレスが大きく、フォロースルーの減速局面で痛みが出やすい

「肩が痛い」という訴えは同じでも、実際にどの筋肉がもっとも硬くなっているかは競技動作によって変わります。だからこそ、問診の段階で「どの動作の、どのタイミングで痛むか」を丁寧に確認することが、深層筋治療では欠かせません。

なぜ休んでも治りきらないのか

整形外科でレントゲンを撮っても骨には異常がなく、「使いすぎ」「安静に」と言われて湿布と消炎剤で様子を見た経験がある方も多いのではないでしょうか。ところが数週間休んでも、投げ始めるとまた同じ場所が痛む。これは、表面の炎症は落ち着いても、慢性的な血流不足によって深層筋の内部が線維化(コラーゲン組織に置き換わり弾力を失う状態)してしまっているためです。

筋肉は本来、使ったあとにしっかり血流が巡ることで疲労物質が流され、修復されていきます。ところが投球障害のように同じ筋肉へ繰り返し強い負荷がかかり続けると、筋肉の内部が慢性的な虚血(血流不足)状態になり、損傷と修復が追いつかなくなります。その結果、筋線維が本来の柔らかい組織ではなく、硬く伸びにくいコラーゲン組織に置き換わっていく。これが線維化です。

線維化した組織は、ストレッチや温熱、安静だけでは元の柔らかい筋線維に戻りません。むしろ休んでいる間に硬さが固定されてしまい、復帰後にまた同じ場所へ負担が集中する、という悪循環に陥りやすいのです。「安静にしていた時は平気だったのに、動き出すとすぐぶり返す」という方の多くが、この状態に当てはまります。

肩甲上神経の絞扼にも要注意

棘上筋・棘下筋を支配している肩甲上神経は、肩甲骨の切り込み(肩甲切痕)というトンネル状の部分を通っています。周囲の筋肉が硬く縮こまると、このトンネルで神経が締め付けられ、痛みだけでなくしびれるような違和感や、腕に力が入りにくい感覚が出ることもあります。「肩が痛いだけでなく、なんとなく力が入らない」という方は、この神経の絞扼も視野に入れて施術を組み立てる必要があります。

当院の深層筋鍼治療でのアプローチ

当院では、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋・上腕二頭筋長頭といった深層のインナーマッスルに、長く太い鍼で直接アプローチします。表面のマッサージや電気治療では届かない深さまで刺激を入れることで、線維化して硬くなった組織そのものに変化を促すのが特徴です。体格や筋肉量に合わせて鍼の長さ・太さを調整しながら、狙った筋肉の深さまで正確に届かせていきます。

刺鍼の際には、当院では一般的な鍼灸院より強めの刺激を用い、鍼を留置する置鍼を行っています。刺激を入れた後にしばらく鍼を置いておくことで軸索反射という反応が起こり、その神経が支配している範囲全体の血流が改善されます。この「留置する時間」があるかないかで、その後の回復のスピードが大きく変わってきます。

刺鍼中には「ズーンとした重だるい響き」を感じることがありますが、これは得気(とっき)と呼ばれる、鍼が目的の筋肉にきちんと届いている証拠でもあります。痛みに敏感な方には刺激量を調整しながら進めますので、鍼の経験がない方もご相談ください。

セルフケア:肩甲下筋・胸まわりのリリースストレッチ

壁やドア枠に肘を90度に曲げて手をかけ、体をゆっくり反対方向にひねるようにして胸〜肩の前側を伸ばします。投球障害では見落とされがちですが、肩の前側(肩甲下筋・大胸筋)が縮んで硬くなっていると、肩甲骨の動きそのものが悪くなり、インナーマッスルへの負担がさらに増えてしまいます。1回20〜30秒、練習前後に行うと変化を感じやすいストレッチです。

セルフケア:肩甲骨まわりの可動性チェック

両腕を体の横に下ろした状態から、肩甲骨だけを寄せる・開く動きをゆっくり繰り返してみてください。左右で動く範囲に差がある場合、動きが小さい側の棘下筋・小円筋が硬くなっているサインです。練習前のウォームアップに取り入れると、投球障害の予防にもつながります。

ただし、セルフケアで伸ばせるのは筋肉の表層まで。すでに線維化してしまった深層部までは、自分の力だけではなかなか届きません。

日常生活にも隠れている「投げる・打つ」動作の負担

投球障害はスポーツをしている方だけの話ではありません。子どもを抱っこして高い位置まで持ち上げる、荷物を頭上の棚に押し上げる、洗濯物を勢いよく干すために腕を大きく振る。こうした日常動作の中にも、肩の外旋・内旋を繰り返す「投げる動作」に似た負荷が隠れています。特に、沖縄では車の運転中に窓を開け閉めする動作や、荷物の積み下ろしを頻繁に行う仕事をされている方にも、同じパターンの肩の痛みが出ることがあります。

「スポーツはしていないのに、投球障害の方と同じような場所が痛い」という方も、実は日常の中で同じ筋肉を酷使している可能性が高いのです。

肩甲骨の動きが崩れると起こること

腕を持ち上げるとき、実は肩関節だけでなく肩甲骨も連動して回転しています。これを肩甲上腕リズムと呼びますが、棘下筋・肩甲下筋といったインナーマッスルが硬くなると、この連動がスムーズにいかなくなり、腕を上げる際に本来使うべきでない僧帽筋や三角筋に余計な力が入るようになります。すると「肩の奥は痛いのに、首や肩の上のほうまで凝ってくる」という状態になりやすく、投球障害を放置している選手ほど首肩全体の張りを併発しているケースが多く見られます。

よくある質問

Q. 痛みが出てからどのくらいで来院すればいいですか?
A. 「投げると痛いけど、日常生活では気にならない」という初期段階でご来院いただくほど、深層筋の線維化が進む前に対応できます。我慢して投げ続けるほど、回復までの期間が延びる傾向にあります。

Q. 施術中も練習や試合は続けられますか?
A. 症状の程度によりますが、痛みの原因になっている筋肉への負担を一時的に減らしながら、施術と並行して競技を続けられるケースも多くあります。競技レベルや大会時期に応じてご相談ください。

「投げる・打つ」競技をしている方へ

野球、バレーボール、ハンドボール、水球、槍投げ、テニス、格闘技など、競技は違っても肩の中で起きていることは驚くほど共通しています。「病院では異常なしと言われた」「湿布とリハビリを続けているのに変わらない」という方は、深層筋そのものにアプローチできていない可能性があります。那覇・首里の北京堂鍼灸首里いじゅ治療院では、伊集和重(鍼灸師歴18年・施術回数3万5000回以上)が、一人ひとりの競技動作を踏まえた深層筋鍼治療を行っています。那覇市内はもちろん、浦添・宜野湾・糸満・豊見城からの来院も多くいただいています。

大切な試合前に無理をして状態を悪化させてしまう選手を、これまでにも数多く見てきました。「このくらいなら大丈夫」と我慢を重ねる前に、一度深層筋の状態を確認しておくことが、長くその競技を続けていくための近道になります。

肘の使いすぎによる痛み(野球肘・テニス肘・ゴルフ肘)についても、関連する記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

【那覇・首里】野球肘・テニス肘・ゴルフ肘が治らない方へ|なぜ繰り返すのか?