夜も眠れないほどの五十肩の痛みが、鍼を受けて変わるまで|那覇の実例
「夜中に肩の痛みで目が覚めてしまう」「腕を下ろしているだけでズキズキする」。北京堂鍼灸首里いじゅ治療院に来院されるまで、そんな夜を何週間も過ごしていた40代男性の患者さんがいました。今回は、この方が来院してから痛みが変化していくまでの実際の経過を紹介しながら、五十肩の原因と当院の施術方針についてお伝えします。日々多くの肩の症状と向き合う中で、同じような悩みを抱えている方の参考になればと思います。
五十肩とはそもそもどんな状態か
五十肩は正式には肩関節周囲炎と呼ばれ、40代から60代にかけて特に多く見られる肩の症状です。はっきりとしたきっかけがないまま徐々に痛みが出てくることもあれば、重いものを持った拍子や、腕を大きく上げた瞬間から急に痛みだすこともあります。経過としては、痛みが強く動かすこと自体がつらい「急性期」、痛みは落ち着いてくるが肩が固まって動かしにくい「拘縮期」、少しずつ可動域が戻っていく「回復期」という段階をたどることが多いとされています。今回紹介する患者さんは、まさにこの急性期から拘縮期にかけての、最もつらい時期に来院されました。
来院前の状態:腕を上げられない、寝返りも打てない
その患者さんが最初に訴えていたのは「デスクワーク中に腕を上げると激痛が走る」「寝ている間に肩を下にすると痛みで目が覚める」という症状でした。特につらかったのが夜間痛です。じっとしていても肩の奥がズキズキと疼き、眠りが浅くなることで日中も疲労感が抜けない状態が続いていました。整形外科でレントゲンを撮っても骨には異常がなく、「五十肩でしょう」と湿布と痛み止めを渡されただけで、根本的な対処法が見つからないまま当院にたどり着いたそうです。
初回のカウンセリングでは、髪を洗う動作、シャツの袖に腕を通す動作、車のシートベルトを締める動作など、日常のあらゆる場面で肩をかばっている様子がうかがえました。仕事にも支障が出ており、「痛みで集中力が続かない」「このまま一生この痛みと付き合うのか」という不安も強く感じている状態でした。可動域を確認すると、腕を横から上げる動作、後ろに手を回す動作の両方で大きく制限が見られ、特に後ろに手を回す動作では痛みのために途中までしか動かせない状態でした。
原因はどこにあったのか:内旋筋の硬化と腕神経叢周囲の緊張
五十肩の痛みや可動域制限を診るとき、当院では肩甲骨の外側にある棘下筋(きょくかきん)・小円筋・大円筋だけを見ることはしません。この3つの筋肉が硬くなっている場合、その根本原因は反対側、つまり肩関節を内側にひねる働きをする内旋筋群、具体的には肩甲下筋・大胸筋・小胸筋が縮こまっていることにあるケースが非常に多いのです。
デスクワークやスマートフォンの操作で腕を体の前に出す姿勢が続くと、肩甲下筋や大胸筋・小胸筋は常に縮んだ状態で固定されます。この状態が長く続くほど、反対側の棘下筋・小円筋・大円筋は伸ばされながら働き続けることになり、これは筋トレでいうと最も負荷の大きい「エキセントリック収縮」を延々と強いられているのと同じ状態です。結果として棘下筋・小円筋・大円筋がガチガチに硬くなり、腕を上げる・後ろに回すといった動作で強い痛みが出るようになります。
さらに、この患者さんのように夜間痛が強いケースでは、頸椎7番(C7)周囲の筋肉や、そこから腕へと伸びる腕神経叢の周囲の凝りが強く関わっていることが多くあります。腕神経叢周辺の筋肉が硬くなっていると、じっとしている時でも神経が刺激され続け、夜間の疼くような痛みとして表れやすくなるのです。
なぜ湿布や安静では変わらなかったのか
この患者さんが整形外科で処方された湿布や痛み止めで改善しなかった理由は、痛みの根本原因が炎症だけでなく、深層筋の線維化にあったためです。肩関節周囲の筋肉に慢性的な血流不足が続くと、筋肉の細胞は酸素や栄養が届かない状態にさらされ続け、損傷と修復を繰り返すうちに筋繊維が弾力を失ったコラーゲン組織に置き換わっていきます。これが線維化です。線維化が進んだ組織はさらに血流を悪化させるため、痛みが長引き、湿布のような表面的な対処では変化が出にくくなります。
この線維化は特に、棘下筋や肩甲下筋のような大きく厚みのある筋肉の深層部や、筋肉が骨に付着する部分に起こりやすいという特徴があります。表面をさするようなマッサージでは、この深い部分にまで刺激が届きません。
施術の様子:急性期でも患部にしっかり鍼をする
「痛みが強い時期は触らない方がいいのでは」と思われがちですが、当院の方針は逆です。五十肩の夜間痛は、C7周囲の筋肉や腕神経叢周囲の凝りが強いことでかえって増悪することが多いため、急性期であっても、その部位に適切な刺激をしっかり入れることを大切にしています。「炎症があるから触れない」のではなく「適切な部位に適切な刺激を」というのが当院の考え方です。
この患者さんに対しては、棘下筋・小円筋・大円筋はもちろん、根本原因である肩甲下筋・大胸筋・小胸筋、そしてC7周囲・腕神経叢周辺の筋肉にも長い鍼でしっかりとアプローチしました。当院では一般的な鍼灸院より強めの刺激を用い、鍼を留置する置鍼を行っています。鍼を一定時間留置することで軸索反射という神経反応が起こり、刺激された神経領域全体に血流改善・鎮痛効果がじっくり波及していきます。単発の刺激だけでは得られない、この置鍼の時間こそが北京堂浅野式の根幹をなす部分です。
整骨院やマッサージとの違い
この患者さんも、当院に来る前に整骨院や電気治療を試したことがあると話していました。表面的な電気治療や軽いマッサージでは、痛みが強い部分をなでるような刺激にとどまり、内旋筋群のように体の深いところで縮こまっている筋肉までは届きません。長く太い鍼を使う深層筋鍼治療は、この「届かない深さ」に直接アプローチできる点が根本的に異なります。特に五十肩のように、表に出ている症状と本当の原因筋が別の場所にあるケースでは、深部までしっかり届く施術かどうかが結果を大きく左右します。
経過:数回の施術でどう変わっていったか
初回の施術後、その患者さんは「刺激は強かったが、その夜はいつもより眠れた」と話してくれました。数回の通院を重ねる中で、夜間痛の頻度が減り、腕を上げる動作の可動域も少しずつ広がっていきました。デスクワーク中の痛みも軽減し、「湿布だけの生活から抜け出せた」と話していたのが印象的でした。五十肩のように長引く症状は、1回で劇的に変わるというよりも、深層の筋肉が少しずつ緩んでいく過程を数回かけて実感していただくことが多いです。
五十肩と間違えやすい症状にも注意
肩の痛みの中には、五十肩とよく似ているものの、実際には石灰沈着性腱板炎やインピンジメント症候群(肩峰下で腱板が挟み込まれる状態)など、別の原因が隠れているケースもあります。石灰沈着性腱板炎は、腱の中にカルシウムの結晶が沈着することで急激な激痛が起こる状態で、五十肩よりも痛みの立ち上がりが早いことが特徴です。当院では、痛みの出方や可動域の制限パターンから、こうした他の可能性についても丁寧に確認したうえで施術方針を立てています。強い痛みが続く場合や、発熱を伴う場合などは、念のため医療機関での検査もあわせておすすめすることがあります。
放置するとどうなるか
五十肩は「そのうち自然に治る」と言われることも多い症状ですが、拘縮期に入って肩関節周囲の組織が線維化した状態を長期間放置すると、可動域制限がなかなか改善せず、日常生活の不自由さが数年単位で続いてしまうケースもあります。特に、内旋筋群と外旋筋群の硬化のバランスが崩れたまま固まってしまうと、痛みが引いた後も「腕が完全には上がらない」という状態が残ってしまうことがあります。早い段階で深層の筋肉にアプローチすることには、痛みを軽減するだけでなく、その後の可動域を守るという意味もあります。
ご自宅でできるセルフケア
- 胸のストレッチ:ドア枠や壁に前腕を当て、体をゆっくり前方に開くように胸を伸ばします。大胸筋・小胸筋の硬さを和らげるのに役立ちます。
- 肩甲骨まわし:両肩をゆっくり大きく後ろに回し、肩甲骨を寄せる動きを意識します。痛みが強い時期は無理のない範囲で行ってください。
- タオルを使った振り子運動:軽く前かがみになり、腕の力を抜いて小さく前後・左右に揺らします。無理に大きく動かそうとせず、重力に任せる程度で十分です。
ただし、内旋筋群やC7周囲の深層の凝りまでは、セルフケアだけでは限界があります。夜間痛が続く場合は、我慢せず一度ご相談いただくことをおすすめします。
通院の目安について
五十肩の施術ペースは、急性期か拘縮期かによっても変わってきます。痛みが強い急性期はまず痛みを落ち着かせることを優先し、比較的短い間隔での通院をおすすめすることが多く、拘縮期に入って可動域の改善を目指す段階では、間隔を少し空けながら経過を見ていくこともあります。今回の患者さんの場合も、初めの数回は週1回のペースで通っていただき、夜間痛が落ち着いてきたタイミングで間隔を調整していきました。ご自身の症状の段階に応じた通院ペースについては、初回のカウンセリングでしっかりお伝えするようにしています。また、強めの刺激と置鍼を行った当日は、施術部位に軽い張り感やだるさが出ることがあります。これは組織が変化していく過程で起こりやすい反応で、心配しすぎる必要はありませんが、当日は肩を酷使する動作や長時間の入浴を避け、ゆっくり休んでいただくことをおすすめしています。
那覇・首里で五十肩にお悩みの方へ
北京堂鍼灸首里いじゅ治療院は、那覇市首里にある深層筋鍼治療専門の鍼灸院です。施術者の伊集和重は鍼灸師歴18年、施術回数3万5000回以上の実績を持ち、北京堂浅野式の技術を用いて五十肩の根本原因である深層筋にしっかりアプローチしています。那覇市内はもちろん、浦添・宜野湾・糸満・豊見城からも多くの方にご来院いただいています。
夜も眠れないほどの肩の痛みを、湿布だけで我慢し続けなくても大丈夫です。深層筋からのアプローチで、変化を一緒に目指しましょう。一人で抱え込まず、まずは今の状態をお聞かせください。