こめかみの偏頭痛が月1回まで減った患者さんの話。原因は側頭筋の硬さでした

先日、こめかみのあたりがズキズキと脈打つように痛む偏頭痛に何年も悩まされてきた患者さんが来院されました。月に何度も鎮痛剤を手放せず、ひどい時は光や音にも敏感になって仕事を休むこともあったそうです。今回はその方の経過を交えながら、偏頭痛の背景にある筋肉の話をお伝えしたいと思います。

来院前の状態。こめかみの痛みと、こわばった側頭部

問診の際、その患者さんは「こめかみのあたりがぎゅっと締め付けられて、脈を打つように痛む」と話してくれました。触診してみると、こめかみから耳の上にかけて広がる側頭筋が驚くほど硬く、押すとズーンと響くような痛みを訴えられました。指で軽く触れただけで顔をしかめるほどで、長期間にわたって力が入り続けてきたことがすぐに分かる硬さでした。よく話を聞くと、仕事中に無意識に歯を食いしばる癖があり、夜も歯ぎしりをしていると家族に指摘されたことがあるとのことでした。

偏頭痛と一口にいっても、痛む場所によって関わる筋肉は変わってきます。こめかみに出る痛みは側頭筋の線維化が主な原因になっていることが多く、ストレスによる食いしばり・かみしめが習慣になっている方に多く見られます。この方のように、肩がすくんだような姿勢で仕事をしている方は、食いしばりと連動して三角筋にも強い凝りが出ていることが少なくありません。

頭全体、後頭部の痛みとの違い

もう一つ知っておいていただきたいのは、頭痛は痛む場所によって原因となる筋肉が異なるということです。頭頂部にかけて重だるく痛む場合は、側頭筋・前頭筋・後頭筋といった頭部全体の筋肉の凝りが関わり、首肩の凝りがきつい方に多く出ます。一方、後頭部にズキズキ、ピリピリとした痛みが出る場合は、後頭下筋群や大後頭神経の圧迫による後頭神経痛であることが多く、これはこめかみの痛みとはまったく別のタイプとして区別して考える必要があります。

この患者さんの場合はこめかみが中心でしたが、触診では後頭下筋群にも軽い硬さが見られました。複数の部位が同時に痛む方では、こめかみと後頭部それぞれの原因筋を複合的に診ていく必要があります。

問診で見えてきた生活背景

その患者さんは事務職で、パソコン画面を長時間見続ける仕事をされていました。集中すると無意識に画面に顔を近づけ、眉間にしわを寄せる癖があるとのことでした。デスクワークが続く沖縄の働き方では、こうした「気づかないうちに顔や顎に力が入る」姿勢が積み重なりやすく、側頭筋や咬筋の緊張が慢性化しやすい環境にあります。また、月経周期に合わせて頭痛が悪化する傾向もあるとお話しされており、ホルモンバランスの変化と筋肉の緊張が重なると、痛みがより強く出やすいという印象を私自身も臨床でよく感じています。

施術の経過

初回の施術では、まず側頭筋の緊張が強い部分に絞って刺鍼を行いました。こめかみ周辺は皮膚が薄く神経も敏感な部位のため、体格や筋肉量に合わせて鍼の長さと刺激量を調整しながら、深部までしっかり届かせています。あわせて、食いしばりと連動して硬くなっていた三角筋、そして首肩全体の緊張にもアプローチしました。

施術直後、その患者さんは「頭がふわっと軽くなった気がする」と話してくれました。もちろん一度の施術ですべてが解決するわけではありません。長年かけて硬くなった側頭筋は、何度か施術を重ねることで少しずつ緩んでいきます。数回の通院を経て、「以前は週に2〜3回鎮痛剤を飲んでいたが、今は月に1回あるかないか」というところまで変化が見られました。

なぜ側頭筋はここまで硬くなるのか。線維化という変性

食いしばりや歯ぎしりのように、長期間にわたって収縮し続けた筋肉は、内部や周辺の血管が圧迫されて血流不足になります。すると酸素や栄養が届かず、さらに筋肉が縮んで硬くなるという悪循環に入っていきます。この状態が長く続くと、弾力のあった筋線維が徐々にコラーゲン組織へと置き換わる「線維化」という変性が起こります。線維化は特に、大きく分厚い筋肉の深層部や、筋肉が骨に付着する部分に起こりやすいのが特徴です。

線維化してしまった組織は、休息やストレッチ、温熱、浅いマッサージでは変化しづらくなります。これが「何をしても頭痛が繰り返す」最大の理由です。当院ではこの硬く変性した組織そのものに、鍼で機械的な刺激を加え、こり固まった筋線維をほぐして組織の入れ替わりを促す特殊な刺鍼法を用いています。表面的な施術や一般的な鍼では届かない場所にこそ意味を持つアプローチであり、何年も繰り返してきた偏頭痛にこそ効果を発揮すると、日々の臨床のなかで感じています。

三角筋の緊張と肩のすくみ

施術を重ねるなかで印象的だったのは、その患者さんの肩がいつも耳に近づくようにすくんでいたことです。食いしばりや緊張が強い方は、無意識に肩へも力が入り、三角筋が硬くこわばっていることがよくあります。三角筋の緊張は、こめかみの痛みそのものを直接引き起こすわけではありませんが、首から肩にかけての防御反応と連動しているため、そこを緩めずにこめかみだけを施術しても、根本的な緊張のパターンは変わりにくいというのが臨床上の実感です。施術のたびに肩の力みが少しずつ抜けていくのを見ていると、体全体がひとつながりで緊張していたのだと実感させられます。

当院の施術スタイルについて

他の鍼灸治療と比べて強い刺激を用いること、そして置鍼を行うことが当院の特徴です。置鍼は「必要であれば行う」というオプションではなく、軸索反射という体の反応を十分に引き出すために欠かせないプロセスと考えています。鍼を一定時間留置することで、刺激を受けた神経領域に血流改善・鎮痛効果が波及する時間を確保できるのです。こめかみのような繊細な部位でも、この置鍼のプロセスを大切にしながら施術を行っています。

頭頂部や後頭部にも痛みが広がる場合

今回ご紹介した患者さんはこめかみが中心でしたが、なかには頭頂部にかけて重だるく広がる痛みや、後頭部にズキズキと響く痛みを併せ持つ方もいらっしゃいます。頭頂部の痛みは側頭筋・前頭筋・後頭筋といった頭部全体の筋肉の凝りが関わっていることが多く、首肩の凝りが強い方によく見られます。後頭部の痛みについては、後頭下筋群や大後頭神経の圧迫による後頭神経痛としての痛みと、脊柱起立筋の凝り(特に仙骨エリア)に由来する後頭隆起エリアの痛みとを、きちんと分けて考える必要があります。痛む場所を丁寧にお伺いすることが、施術方針を決めるうえでとても重要です。

ご自宅でできるセルフケア

食いしばりのクセがある方には、日中ふと気づいた時に「上下の歯を離す」ことを意識していただくようお伝えしています。デスクで作業をしているとき、スマートフォンを見ているときなど、集中している瞬間ほど歯を食いしばりやすいので、パソコンの画面端に小さく付箋を貼って、目に入るたびに力を抜くきっかけにするという方法をお伝えすることもあります。また側頭筋のセルフマッサージとして、こめかみに指先を当て、円を描くようにゆっくりほぐすのも効果的です。強く押しすぎず、心地よいと感じる強さで行ってください。ただし、深部まで線維化が進んでいる場合、セルフケアだけで根本から変えるのは難しいのが正直なところです。何年も繰り返す痛みには、深層まで届く施術が必要になります。

こんな頭痛は医療機関の受診を優先してください

当院でお受けする頭痛の多くは筋肉の緊張が背景にあるものですが、今までに経験したことのないような突然の激しい頭痛、手足のしびれや麻痺を伴う頭痛、ろれつが回らない、意識がもうろうとするといった症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。筋肉由来の頭痛かどうかの判断も、まずは安全を最優先にしていただきたいと思います。

那覇・首里いじゅ治療院からのご案内

北京堂鍼灸首里いじゅ治療院は、沖縄県那覇市首里にある、硬い筋肉の凝りによる症状を専門とする鍼灸院です。施術者の伊集和重は鍼灸師歴18年、施術回数3万5000回以上の実績があります。長く太い鍼で深層筋・線維化した筋肉へ直接アプローチする深層筋鍼治療を行っており、那覇市内をはじめ浦添・宜野湾・糸満・豊見城からも偏頭痛にお悩みの方が来院されています。

「鎮痛剤が手放せない」「何年も同じ場所が痛む」という方こそ、一度、痛みの奥にある筋肉の状態を診させてください。お役に立てることを、心から願っています。公式ホームページからは24時間ネット予約が可能です。こめかみの痛み、締め付けられるような頭痛、目の奥の重さなど、些細なことでもお気軽にご相談ください。