那覇の街を朝早くから走っているランナーさん、部活動で毎日グラウンドを走り込んでいる中高生の患者さんを、当院ではよく診ています。そのなかでとても多いのが「すねの内側がずっと痛い」というシンスプリントの相談です。整形外科でレントゲンを撮っても骨には異常なし、湿布と安静を指示されて様子を見たけれど、練習を再開するとまたぶり返す。そんな経験がある方は、決して少なくありません。
シンスプリントで本当に硬くなっている筋肉はどこか
シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)というと、すねの骨そのものが痛んでいるようなイメージを持たれがちですが、当院で深層まで触診していくと、痛みの土台になっているのは骨ではなく、すねの奥深くにある後脛骨筋と長趾屈筋であることがほとんどです。
後脛骨筋はふくらはぎの深層、腓骨と脛骨の間から起こり、足の内側を通ってアーチを支える筋肉です。長趾屈筋はその近くを走り、足の指を曲げる働きを持っています。この2つの筋肉が着地のたびに脛骨の骨膜を引っ張り続けることで、炎症と痛みが生まれます。すねの内側を指で押していくと、骨のきわに沿って点々と圧痛が出るのが特徴で、これは後脛骨筋・長趾屈筋が骨膜を引っ張っているポイントと一致します。表面のふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)をマッサージしても改善しないという方が多いのは、この後脛骨筋・長趾屈筋という深層部にこそ原因があるからです。
なぜ那覇でランナーや部活動の学生にシンスプリントが多いのか
沖縄はアスファルトの照り返しが強く、練習環境として硬い路面を走る機会が多い土地です。硬い路面での着地は足のアーチにかかる衝撃を吸収しきれず、後脛骨筋が常にブレーキをかけるような働きを強いられます。さらに部活動で急に走行距離を増やした学生、フルマラソンに向けて練習量を一気に上げた市民ランナーなど、筋肉の回復が追いつかないペースで負荷をかけ続けているケースが目立ちます。
足関節の硬さも見逃せません。腓腹筋・ヒラメ筋・前脛骨筋・後脛骨筋・長腓骨筋・短腓骨筋、そして足底内在筋の硬さが足関節の可動域を制限すると、着地の衝撃をうまく分散できず、後脛骨筋への負担がさらに集中します。腰や股関節だけでなく、足元まで診ることが根本改善への近道になるのです。
当院に多いシンスプリントのケース
当院にいらっしゃる患者さんを振り返ると、いくつかの典型的なパターンがあります。ひとつは中学・高校の陸上部やサッカー部、バスケットボール部で、大会前に走り込みの量を一気に増やした学生さんです。成長期で骨や関節に比べて筋肉の柔軟性が追いついていないことも多く、後脛骨筋への負担が急激に増えます。もうひとつは、社会人になってから那覇マラソンや久米島マラソンを目標にランニングを始めた市民ランナーの方々です。運動経験がブランクにある状態で急に走行距離を伸ばすと、後脛骨筋・長趾屈筋がその負荷に慣れる前に炎症を起こしてしまいます。
また、バレーボールやバスケットボールのようにジャンプの着地を繰り返す競技でも、同じメカニズムですねの内側に負担が集中し、シンスプリントと同様の痛みが出ることがあります。競技は違っても「着地の衝撃を後脛骨筋・長趾屈筋が一手に引き受けている」という構造は共通しているのです。
脛骨疲労骨折との違いにも注意が必要
シンスプリントと似た症状に、脛骨の疲労骨折があります。シンスプリントは触ると広い範囲がぼんやりと痛むのに対して、疲労骨折は骨の一点に限局した強い痛みが出るのが特徴とされ、悪化すると歩行時にも痛みが続くようになります。安静にしても痛みが強くなる一方だったり、腫れや熱感が強い場合は、念のため整形外科でのレントゲンやMRIによる確認をおすすめしています。当院では個別の診断は行いませんが、危険なサインが疑われる場合には医療機関の受診を優先してお伝えするようにしています。
線維化した筋肉こそ、特殊な鍼が必要な理由
すねの内側という部位は、後脛骨動脈や脛骨神経も近くを走行しているデリケートな場所です。だからこそ、筋肉・血管・神経の位置関係を立体的に把握したうえで、狙った筋肉に正確に届かせる技術が求められます。
シンスプリントが「練習を休めば一時的に良くなるが、再開するとまたすぐぶり返す」という慢性化パターンをたどりやすいのには理由があります。後脛骨筋のように慢性的に負荷がかかり続けた筋肉は、虚血と軽い炎症を繰り返すうちに、弾力のあった筋線維がコラーゲン組織に置き換わる「線維化」という変性を起こしていきます。線維化はとくに、筋肉が骨に付着する起始停止部に起こりやすく、後脛骨筋が脛骨に付着する部分はまさにその代表的な場所です。
線維化してしまった組織は、ストレッチや温熱、表面的なマッサージでは変化しにくくなります。これが「何度施術を受けても変わらない」最大の要因です。当院ではこの硬く変性した組織そのものに、長く太い鍼で機械的な刺激を加え、こり固まった筋線維をほぐして組織の入れ替わりを促す特殊な刺鍼法を用いています。表面的な施術では届かない深さにこそ意味を持つアプローチであり、何年も繰り返してきたシンスプリントにこそ効果を発揮します。
当院の施術スタイル
当院では一般的な鍼灸院より強めの刺激を用い、鍼を留置する置鍼を行っています。これは北京堂浅野式の根幹となる考え方で、鍼を一定時間留置することで軸索反射という体の反応を引き出し、刺激した神経領域の血流改善・鎮痛効果を十分に波及させるためです。単発で鍼を打って終わりにするのではなく、後脛骨筋・長趾屈筋の深部までしっかり届かせ、留置することで初めて、線維化した組織に変化が生まれます。
刺鍼の際は、うつ伏せの体位で下腿の内側から後脛骨筋・長趾屈筋の走行に沿って、筋肉の量に応じた長さの鍼を用います。得気(とっき)と呼ばれる、じんわりとした重だるい響きが出る深さまで届かせることが、効果を出すための重要なポイントです。
セルフケアでできること、そして限界について
練習前後にできるセルフケアとして、まず後脛骨筋のストレッチをご紹介します。座った状態で足首を内側に返し、そのまま足の甲を伸ばすように保持すると、すねの内側から足裏にかけて伸びを感じられます。30秒程度、呼吸を止めずに行ってください。もう一つは、タオルギャザーです。床にタオルを敷き、足の指だけでたぐり寄せる運動で、足底内在筋を活性化させ、足のアーチを支える力を養います。
ただし、これらのセルフケアはあくまで表層から働きかけるものです。すでに線維化してしまった深層の後脛骨筋・長趾屈筋には、セルフケアだけで届く範囲に限界があります。「毎日ストレッチしているのに変わらない」と感じている方こそ、深層筋への直接的なアプローチが必要なサインだと考えてください。
練習の組み立てという意味では、走行距離を一週間で一気に増やさず、週ごとの増加をゆるやかにすることも大切です。特に大会が近づくと焦って距離を伸ばしたくなりますが、後脛骨筋の回復が追いつかないまま負荷を重ねると、かえって長期離脱につながりかねません。硬いアスファルトばかりでなく、芝生やクレー(土)コースのようにクッション性のある路面を練習に取り入れることも、すねへの負担を減らす一つの工夫になります。
施術の目安と、競技復帰までの考え方
シンスプリントの場合、痛みの強さや線維化の進み具合にもよりますが、まずは週に1回程度のペースで数回通っていただき、後脛骨筋・長趾屈筋の硬さがどれだけ変化していくかを見ながら間隔を調整していくことが多いです。痛みがゼロになってから急に元の練習量に戻すのではなく、施術と並行して少しずつ走行距離を戻していくほうが、再発を防ぎやすいという実感があります。大会を控えている学生さんには、大会までの残り期間を踏まえて施術のペースをご相談させていただいています。
那覇・首里いじゅ治療院からのご案内
北京堂鍼灸首里いじゅ治療院は、沖縄県那覇市首里にある、硬い筋肉の凝りによる症状を専門とする鍼灸院です。施術者の伊集和重は鍼灸師歴18年、これまでの施術回数は3万5000回を超えています。長く太い鍼で深層筋・線維化した筋肉へ直接アプローチする深層筋鍼治療を行い、那覇市内はもちろん、浦添・宜野湾・糸満・豊見城など沖縄各地からランナーや部活動の学生さんが来院されています。
「湿布と安静を繰り返してきたけれど変わらなかった」というシンスプリントこそ、深層の後脛骨筋・長趾屈筋にしっかりアプローチする当院の施術で変化を実感していただけることが多くあります。走ることを諦める前に、一度ご相談ください。
公式ホームページから24時間ネット予約が可能です。すねの痛みで練習を思うようにできず悩んでいる方、大会を目前に控えて焦っている学生さん、久しぶりのランニングでシンスプリントを繰り返している方、どうぞお気軽にお問い合わせください。