鍼の効果・適応症

鍼を筋肉の凝り固まった部分に刺すとなぜ良いのか、どのように効果が出るのかと、適応する症状の説明です。

鍼灸治療には様々な流派・手法がありますが、当院で行う北京堂鍼灸についての説明です。

北京堂鍼灸は浅野周先生が考案した鍼灸の治療方法です。

その方法の出発点は中国医学の古典『黄帝内経』の

「不通則痛:通じざれば則ち痛む」をもとに

その治療的根拠を主に木下晴都と朱漢章の理論により現代解剖学・生理学的に説明したものと考えています。

具体的にはどのようなものか?

①軸索反射(じくさくはんしゃ)

人の体には「軸索反射」という無意識に働く反射機能があります。

その反射とは

生体の組織が侵害刺激(針の刺入など)を受けるとCGRPやSP(サブスタンスP)などの特殊な物質(神経伝達物質)が放出されます。そしてその物質には血管を拡張させる働きがあり、針を刺した局所とその近くに血流が増加するというものです。

簡単に言うと、体を何かしらで痛めつけられると、その部分が赤くなったり充血したりしますが、その反応が軸索反射です。

鍼を固い筋肉に刺入することでこの軸索反射を起こし、凝り固まった筋肉に血流が増加し、コリが緩んでいくということです。

これを体の浅層から深層まで行えるのが鍼のとても有用な特徴です。

②筋繊維の癒着をほぐす

長期間にわたって凝り固まった筋肉の繊維は、ストレッチやマッサージではほぐれません。表面的にほぐれたように感じた時でも、よく筋肉を探っていくとコリコリとしたスジを感じられると思います。

このスジは固く縮んだまま伸びなくなった筋肉の繊維で、血流も少なく、放置していれば元に戻す事は難しい状態です。このスジにも鍼を入れていくことによって穴を開け、柔らかい筋肉に戻るきっかけを作ります。

③自律神経の働きが良くなる

軸索反射や、スジに微小な穴を開けることで筋肉の血流が改善し柔らかくなると、筋肉に圧迫されていた神経や血管が解放され、圧迫により起こっていた痛みや痺れが改善します。

自律神経が通っている脊椎の付近に鍼を入れることによって神経周囲の血流が改善し、その効果器(内臓や各器官)の働きが良くなります。

適応症

筋肉のコリにより起こる痛みや、神経や血管が筋肉のコリに圧迫されて起こる症状に対し高い効果が期待できます。

・ぎっくり腰

・坐骨神経痛・足の痺れ

・腰痛

・膝痛

・寝違え

・五十肩

・頭痛

・頚肩腕症候群・手の痺れ

・ムチウチ・頚椎症

・自律神経失調症





ぎっくり腰

当院ではぎっくり腰を大腰筋を中心とした腰背部・臀部の筋肉の痙攣と考えて治療します。一回の治療でぎっくり腰を起こす少し前の状態まで戻します。
痛みを完全に取り、ぎっくり腰の再発を防ぐためには3~6回ほど治療の継続をお勧めします。

【ぎっくり腰の原因】

主に大腰筋を酷使した結果の痙攣です。普段より屈んだり立ち上がったり、重たいものを沢山運んだ、中腰や同じ姿勢が長かった、坂や階段を多く上り下りした、不意に腰を捻った 時などに起こることが多いようです。

大腰筋は脊柱と下肢をつなぐ唯一の筋肉であり、姿勢を支える重要なインナーマッスルです。過労状態であったり、それに加えて上記のような酷使をすると、痙攣が起こります。

軽度であっても強い痛みが起こり、恐る恐るしか動けなくなり、重度の場合ですと微動だに出来なくなってしまいます。大腰筋は腸骨の前を通って股関節につくため、痙攣すると前屈みになり、真っすぐ立てなくなります。また、胸椎の下部からついているので、横隔膜に接しています。そのためくしゃみや咳をすると大腰筋が刺激され、痛みが強まります。

逆に背中側の脊柱起立筋や臀部の筋肉が原因だと前屈みができなくなります。


【ぎっくり腰の治療】

患者さんの体格を考慮し、鍼の大きさを選択し、大腰筋に刺鍼し35分間置鍼します。やはり得気(悪い所に当たってズキンとする感覚)があると効果が高まります。

重症でうつ伏せになれない場合は横向きで刺鍼します。

治療の前に、ぎっくり腰ではない疾患との鑑別が必要です。似た症状を起こす疾患として尿管結石・腰椎圧迫骨折・急性ヘルニアが挙げられます。これらの疾患は鍼の不適応疾患ですので速やかに病院に行っていただきます。

尿管結石と圧迫骨折ではぎっくり腰と同じく、くしゃみ・咳で痛みます。

鑑別方法としては腰椎に手のひらをあて、もう一方の手で握り拳を作りポンポンと叩きます。尿管結石が振動で動くと痛みますし、腰椎圧迫骨折でも衝撃で痛みます。ぎっくり腰ではそれほど痛みません。
急性ヘルニアではSLRテストで高確率で陽性となります。


【ぎっくり腰の治療後の養生】

治療後は、他の疾患と同様で安静にしてひと眠りが出来れば一番良いです。次の日以降は不安があれば腰痛ベルトを巻いて日常生活を送ってください。ただし中腰や重たいものを運ぶ、立ったり屈んだりを繰り返す、同じ姿勢を長く続ける、などは出来るだけ避けてください。

よく、「温めたほうが良いか?、冷やしたほうが良いか?」と質問がありますが、治療後には温めてください。お風呂も入っていただいて構いません。

では治療する前はどうすれば良いか?ぎっくり腰直後は(大腰筋の痙攣であれば)冷やしても温めてもあまり効果はありません。大腰筋は深部にありますので体表からの温度変化が届きにくいためです。もちろん、冷やし過ぎは血行不良を招きますので良くないでしょう。出来るだけ早く鍼治療を受けることをお勧めします。

鍼を受けることが出来ない場合もあると思いますが、痛み止めを飲んで安静にするしかないでしょう。安静を保てれば痛みが徐々に引いていくこともありますが、その後の再発もしやすいようです。

当院では往診も行っておりますのでお困りの際はご相談ください。




五十肩・肩関節周囲炎

五十肩は50代の方を中心に多く発症する肩の強い痛みと可動域制限です。急性期には夜間に痛みで眠れなくなったり、腕を後ろに回す動作が出来なくなり、日常生活に支障をきたします。

北京堂の治療では1回~3回の治療で強い痛みや夜間痛を軽減させ、6回~10回で完治を目標にします。

肩関節周囲炎という医学的な名称がありますが、

腱板断裂や肩の関節の変形、がんなどの腫瘍、内臓が原因となっている痛み、リン酸カルシウム結晶による石灰沈着性腱板炎などが無い場合(原因が筋肉の緊張と考えられる場合)に五十肩と呼ばれます。

五十肩は 急性期→拘縮期→緩寛期という経過をたどります。

急性期……強い自発痛(何もしなくても痛む)、夜間痛があり、関節可動域も強く制限されます。約2週間ほど続く。

拘縮期……強い自発痛や夜間痛は軽減し、動作時痛と可動域制限が残ります。約6か月ほど続く。

回復期……痛みや可動域制限が緩やかに改善していく時期です。

回復の期間は個人差があり1年以上かかっても回復しなかったり、可動域制限や部分的な痛みが残る事があります


五十肩・肩関節周囲炎の原因

原因は患者さんにより様々ですが、首、肩凝り(特に首の凝り)が、ある一定程度まで状態が悪くなった時に、何かのきっかけで炎症が始まることが多いようです。

首の凝りが肩や腕へ行く神経を圧迫し、肩腕の筋肉へ凝りが広がっていきます。

きっかけは、スポーツなどで強く動かした、日常の何気ない動き、少し離れたものを取ろうして腕(肩)を伸ばした、などです。

また、交通事故や、スポーツ等での外傷、転倒した際に肩を強打した結果、肩関節周囲炎になる場合もあります。

肩関節は健全であれば自由度が高いとても有用な関節ですが、その自由度を可能にしているのが、肩関節をぐるりと囲んでいるローテーターカフ(回旋筋腱板)と呼ばれる4つの筋肉です。

これらが加齢とともに固くなり、炎症を起こし、痛みの悪循環が始まり、五十肩の急性期となります。

【五十肩・肩関節周囲炎の治療】

頚部の神経を締め付ける筋肉を深層から緩めるための頚部基本刺鍼に加えて、可動域制限や痛みの強い動作を確認し、治療すべき筋肉を決めていきます。

回旋筋腱板(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)や三角筋・烏口腕筋などは、押圧痛をよく調べて鍼をします。

 

〇安静時痛・夜間痛が強い場合

痛みの出ている肩関節周りにももちろん鍼をしますが、首周りの深層の筋肉が肩と腕に行く神経を圧迫するのが原因と考えます。

患部にいくらマッサージや鍼をしても改善しないことがあるのはこのためです。

夜間から朝方にかけてや、同じ姿勢を続けたりすると、筋肉への血流量が減少し、首の筋肉が緊張して首から出てる神経の支配先へと症状をだします。

 

〇腕を挙げる時に痛む場合

手のひらを太ももにつけた気をつけの状態から挙げ始めるときは棘上筋が働きます。棘上筋が傷害されていると外転(手を真横に上げる)を始めることが出来ません。(図の第1相)

ある程度(30度くらい)挙がれば強力な外転筋である三角筋によって運動が引き継がれます。(図の第2相)

三角筋による外転は90°までで、90°からは僧帽筋、前鋸筋、反対側の脊柱起立筋の働きにより肩を耳までつけることができます。(図の2~3相)

腕を挙げる働きの三角筋・棘上筋と、縮むと腕を挙げるのを邪魔してしまう肩甲下筋を治療します。

三角筋は骨をこするように横から刺入して深部を効率よく緩めます。

棘上筋は、肩井とその前後から鍼先を肩鎖関節の下をくぐらせるようにして上腕骨頭に鍼先を当てます。これは肩峰下滑液包にもアプローチしていますので、インピンジメント症候群(腱板・滑液包が上腕骨に挟まれ痛む)にも対応しています。

肩甲下筋は腕を出来る限り開かせ、脇から半袖シャツのステッチのように硬結部分に鍼を当てるようにします。

 

〇腕が背中へ回せない場合

痛くて髪を洗えない、トイレでお尻を拭くのに痛む、衣服の着脱で痛むなど腕を体の後ろへ回せない場合、仰向けで烏口腕筋と肩甲下筋を治療します。

仰向けの状態で腕をできるだけ外転させ、腋窩と鎖骨下から胸郭を確認し、中府や雲門の辺りから肩甲下筋へ刺鍼します。

烏口腕筋は上腕の内側から上腕骨をこするように外側へ向けて刺鍼します。

 

【五十肩の養生・予防法】

五十肩の養生と予防は、

①無理な荷重をかけないことです。重たい買い物袋をもって頑張って歩いたなどでも悪化します。

②患部を冷やさないこと、冬はもちろんですが、夏もエアコンを効かせて寝ると夜間痛のきっかけになります。

③同じ姿勢を続けないこと、特にPC・読書・スマホを等を見る下向き姿勢で頚部の筋肉に負担がかかります。

ウォーキングやラジオ体操などで全身を軽く動かす習慣をつけるのも大切です。

 

 

 

 

坐骨神経痛・足の痺れ

腰から足にかけての大きな神経が、筋肉の緊張や、その他の原因で圧迫されたことにより起こる痛みや痺れです

鍼灸治療で適応となる坐骨神経痛は、梨状筋症候群、大腰筋や腸骨筋、中・小殿筋、その他の腰部から下肢の筋肉の緊張によるものです。

 

適応〇……筋肉の緊張により神経を圧迫した痛み・痺れ

不適応×……腫瘍、胎児による神経の圧迫

適応の場合がある△……椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症・分離症、腰椎手術後の痛み・痺れ

 

坐骨神経痛治療の回数の目安は、

大腰筋や小殿筋などの深層筋がそれほど固くなっていない場合であれば6~10回、深層筋がかなり凝り固まっている、または長患いしている場合は10~20回です。

 

【坐骨神経痛・下肢の痺れの治療】

夜間痛があると筋肉の問題と考えられます。この場合は大腰筋を中心に刺鍼します。梨状筋が固くなり坐骨神経を圧迫し、痛みと痺れを生じたものを梨状筋症候群と呼びますが、治療ポイントが梨状筋のみでは済まない場合も多くあり、坐骨結節周囲の筋肉や大腿部の筋肉、腓腹筋などにも刺鍼します。


【外側大腿皮神経痛と大腿神経痛】

一般的に下肢の神経痛をまとめて坐骨神経痛と呼ばれることが多いですが、厳密にいうと固くなっている筋肉と圧迫される神経によってその病名と治療は変わってきます。

〇外側大腿皮神経痛

股関節から大腿部の外側面、すねの外側に痛みを出します。この場合の治療ポイントは腰方形筋、小殿筋、大腿四頭筋外側頭、腓骨筋などです。

 

 

〇大腿神経痛

大腿部の前面に痛みを出します。治療ポイントは腸骨筋と中間広筋です。仰向けか横向きの姿勢で刺鍼します。

 

 

【脊柱管狭窄症・椎間板ヘルニア・腰椎手術後の痛み・痺れ】

画像所見で椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎分離症、変形性腰椎症などの器質的病変が判明した病態には、鍼灸治療は効果がないのでしょうか?


実際には効果があることがあります。画像診断で、ヘルニアが見つかっても、すべての症状が、そのヘルニアに起因しているとは限らないからです。

これは整形外科医も認めるところで、画像診断=確定診断ではないのです。なぜかというと、ヘルニアや狭窄が認められるのに、坐骨神経痛(他の下肢の神経痛も含め)が発症していない人は沢山いるからです。

つまり、例えヘルニアや狭窄で神経痛があっても、100パーセントそのヘルニアによって症状が出ているとはいいきれないのです。

ヘルニアや脊柱管狭窄、すべり症、骨の変形といったものが起こる原因とは何でしょうか?
突発性の事故、激しいスポーツ等での外力による傷害なら、筋肉の疲労・硬結は関係ないでしょう。しかし、ほとんどのケースでは、加齢による退行性の病変や、仕事による疲労の蓄積が原因です。

順番としては、筋肉の疲労が先にあり、その持続的ストレスにより、骨や椎間板が破綻したと考えるのが自然です。ならば器質的病変でも、筋肉を治療することで、症状が改善する可能性は十分にあります。

 

ヘルニア・脊柱管狭窄症などの画像診断が出ても、膀胱直腸障害が強い場合以外はいきなり手術は選択されません。

そこで、まず3回、当院の鍼を受けてみてはいかがでしょうか。それで鍼で改善するか否かがはっきりします。

 

 

 

●腰痛

原因が特定できる腰痛(特異的腰痛)は全体のわずか15%程度しかなく、腰痛の85%は原因がはっきりしない腰痛(非特異的腰痛)といわれています。

特異的腰痛の主な原因は椎間板ヘルニア(4%)、脊柱管狭窄症(4%)、圧迫骨折(4%)、感染性脊椎炎(1%)、尿路結石(1%)などが挙げられます。

原因がはっきりしない85%の腰痛に関しては、筋筋膜性疼腰痛が知られてきており、病院でも筋肉の問題だと診断されるケースが増えてきました。

筋肉の過緊張が原因で筋肉内の神経や血管を圧迫して痛みを出したり、肉離れのように筋繊維にダメージがおこり腰痛になります。

ここでは、腰痛を引き起こす筋肉と当院での腰痛施術について説明します。

 

①脊柱起立筋・回旋筋・多裂筋

脊柱起立筋群(棘筋・最長筋・腸肋筋)と、それらの深層筋である回旋筋・多裂筋は脊椎を縦に走行しており姿勢を正す筋肉です。

 

腰を前に倒したり、左右に捻ると腰の真ん中の辺りが痛みます。そして仙骨までつながっているので腰の下部からお尻の上部まで痛むこともあります。

 

また比較的浅い層にある筋肉(部位と体格によって深い所で6センチ)なので緊張している部分の押圧痛もみられることが多いです。

軽症の場合はマッサージやストレッチでも改善する場合がありますが、筋肉が繊維化し、多少の刺激では緊張が緩まない場合は鍼治療が効果的です。

 

【脊柱起立筋・回旋筋・多裂筋の治療】

腰椎に沿って外側2㎝位に刺鍼します。重症の場合は圧痛点を中心に2列、3列に打つ場合もあります。

 

12胸椎より上に刺鍼する場合は肺や内臓を傷つけないように必ず鍼尖を脊柱に当てます。

また、これらの筋肉で一番外側にある腸肋筋は、2行線から内側に向け脊柱に当てるように横刺します。横刺する方が効率的に広い面積に刺鍼でき、更に安全性も高い方法です。

 

 

②大腰筋

以下に当てはまる場合は大腰筋の緊張が考えられます。

・あお向けで寝て膝を伸ばしていると腰痛が起きるが、膝を曲げ丸まっていると軽減する。


・椅子から立ち上がるとき腰が痛くて伸びない(特に長時間座った後)


・立ちっぱなし、歩きっぱなしで腰が痛くなり座ると軽減する。


・体を後ろに反らすとき腰痛が起きる。


・寝返りの時に腰が痛む


・咳、くしゃみをすると腰にひびく。


・ぎっくり腰の経験がある


・腰椎椎間板ヘルニア、脊柱菅狭窄症等、腰椎の器質的疾患がある。


・下肢に症状がある。(痛み、おもだるさ、痺れ、疲労感)


・腰の中央がピンポイントでなく広い範囲で痛む。


・腰の痛む所を押しても少し気持ちいいくらいで、ここというところが押せない。


・上記のような動作や姿勢で腹部が痛む。

 

大腰筋は腰椎から腹部内臓器と骨盤の裏側を通り、太ももの付け根の内側までついています。腰の筋肉では一番深く、腸の後方にある為、直接はほとんど触れません。(わき腹や鼠径部付近から腸をずらしながら触れば多少触れますが、触診しづらい筋肉です。)

 

そのため筋肉の緊張が慢性化し、手つかずの頑固なコリになりやすい筋肉です。
作用は腰の前屈と足を上にあげることです。
要するに体を丸めるための筋肉となります。

筋肉は緊張したまま放置すると伸縮性が無くなり縮んだままになりますので、作用と逆の動きをすれば縮んでいる筋肉を無理やり伸ばすことになり痛みがでます。それが上記の動作や姿勢です。

更に、咳や、クシャミをすると痛みます。
横隔膜は呼吸に伴って伸縮を繰り返している筋肉です。胸と腹の境目でドーム状になっています。咳、クシャミをすると横隔膜が急に強く大きく動き、近くにある大腰筋に当たってしまい痛みます。

また大腰筋は体の断面図で見ると中心部にあるため、腰ではなく腹部に症状を感じることもあります。

大腰筋は、腰椎から太ももの付け根まで脊椎に沿ってついているので腰の中央のやや広い範囲が痛みます。また、下肢に行く神経が大腰筋の間や周囲を通りますので大腰筋が緊張し、神経を圧迫すると足に症状がでることがあります。

夜中にふくらはぎが痙攣するこむら返り、足先や足首がつるような症状も、まず大腰筋に刺鍼し、それでも改善しなければふくらはぎにも加えます。

 

【大腰筋の鍼治療】

うつ伏せで第4腰椎棘突起間の外方4~5㎝に直刺で、更に外方から斜刺で刺入します。大腰筋の上部は薄くて幅も狭く、下部にいくにつれて、厚くて幅が広いので、L1/2間・L2/3間は下部よりワンサイズ短い鍼を用い、少し腰椎に近づけて直刺します。腰椎を挟んでハの字に鍼が並ぶように刺鍼します。
 

 
鍼の長さは体格に合わせて3寸(9センチ)前後の物が必要です。
短い鍼では大腰筋に届かなかったり、届いたとしても十分に弛緩させるのは難しいでしょう。

 

大腰筋は、マッサージや電気治療・湿布薬では刺激が届かず、ストレッチでも体が固い人は伸ばしにくい筋肉です。

そのため疲労の蓄積がされやすく、最終的にはぎっくり腰や下肢の神経痛や血行不良の原因となり、下半身の深層筋治療でも重要な部分です。

深部まで直接刺激できる北京堂浅野式の鍼灸治療の効果がとても高い筋肉です。

 

 

③腰方形筋

以下が腰方形筋が緊張している時の特徴です。

・腰をひねると痛む。


・腰の外側が痛む。


・身体を側屈すると伸ばされている方が痛む。


・腰の後ろ側ではなく、脇腹から脊椎に向かって指圧すると痛
む。

腰方形筋は骨盤の上縁から腰椎の肋骨突起、12肋骨につく板のような筋肉です。腰を横に倒したり回したりするときに働く筋肉です。左の方形筋であれば右に体を倒したときや左右に回したときに痛みますし、立ち座りの瞬間に筋肉が伸ばされ痛みます。


脇腹から腰椎の肋骨突起に向けて押すと腰方形筋が触知でき緊張していると圧痛があります。

 

【腰方形筋の鍼治療】

まずは12肋骨先端を探し、その少し下の第3腰椎の高さの腸肋筋の外縁のやや外側に腰方形筋を触知できます。

そこからベット面に水平に刺し、椎弓に向けて刺入します。鍼の長さは普通の男性で10㎝前後で必ず10番以上の太めの鍼を使用します。細い鍼だと重力に負けて腸の方へ鍼尖が向かい危険ですので、10番以上の太い鍼が必要です。

 

 

④腸骨筋

腸骨筋は腸骨(骨盤の一部)の前面につき大腰筋と同じく大腿骨の小転子に着く筋肉です。大腰筋と同じく股関節の屈曲を行い、大腿を持ち上げる働きがあります。大腰筋と腸骨筋合わせて腸腰筋とも言います。

腸骨筋は骨盤の内側にあるので痛む部分が解りづらく、腰から臀部の痛みがなかなか改善しない場合、原因となっているケースがあります。腰を曲げたくなるように感じる腰痛です。足を上げにくく感じる症状もあります。大腰筋と同じように痛みを感じたり、腸骨付近やコマネチのラインに痛みを感じることもあります。

【腸骨筋の鍼治療】

仰向けで膝の下にクッション等を入れて膝を曲げ、腹壁と腸骨筋を緩ませた状態で刺鍼します。骨盤は形状に男女差があり、女性は少し斜刺、男性は直刺で上前腸骨棘から上下に鼠径部に沿って骨盤に鍼尖を添わせるように刺鍼します。

鍼の長さは10~12㎝、太さは10番以上を使用します。

 

 

 

⑤中殿筋

中殿筋は、腸骨の後面の上部に腸骨稜に沿って始まり、大転子に着きます。股関節の外転にはたらき、立位での体重の支持を行います。

 

中殿筋が原因の腰痛では、立ち座りの動作や前屈すると腰のやや外側から腰骨(腸骨稜)付近に痛みが出るため、腰痛として来院される方も多いです。

また、慢性腰痛に悩まされるような方はこの中殿筋とその深層部にある小殿筋が固くなり、股関節の動きが悪くなっていることが多く、腰痛の基本的な治療に必須の部分です。

 

【中殿筋の鍼治療】

3インチ~4インチの鍼を用いて大転子から腸骨稜にかけて等間隔に刺鍼します。大きい方は4本ずつ、小柄なら3本ずつを4列から5列刺鍼し、大転子から腸骨稜に向けて扇状になるように施術します。